心臓血管内科
心臓血管内科
心臓血管内科は、心臓や血管の病気の診断・治療を行う専門科です。心臓と血管は、私たちの体に酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を担っています。これらの臓器に問題があると、命に関わることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
心臓は酸素や栄養の含まれた血液を全身に送るポンプの働きをしています。心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎などの心臓の病気にかかると、このポンプの働きに障害が生じます。
心不全は、心臓が悪いせいで息切れやむくみが起こり、放置しておくとだんだんと悪くなり、最終的に生命を縮める病気です。
心不全は「急性心不全」と「慢性心不全」に分けられ、急性心不全は、短期間で激しい呼吸困難などの症状が現れることから、重症の場合、命を失う危険性が高くなります。一方、慢性心不全は、ちょっとした動作で動悸や息切れがしたり、疲れやすくなったりします。咳や痰が止まらない、むくみが出るといった症状が現れることもあります。
心不全は治療により一時的に安定しても生活要因や病気の進行により状態悪化を繰り返しながら気づかないうちに悪化し命に関わる病気です。
心不全は生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)との関連性が高く、高齢になるほど発症する方が増えてくる傾向があります。日本国内に心不全患者は120万人、死因の第2位で、今後も増加すると言われています。
心不全には「完治は無い」ため、上手に管理して「安定」させることが重要です。そのためには、専門医の指導のもとに①薬物治療、②運動療法、③食事療法を実践することが重要です。これらの実践には患者さん自身の協力が必要不可欠ですので、正しい療養の仕方を身に着けることも大切です。そのための訓練として、心臓リハビリテーションと呼ばれる医療チームによる包括的支援プログラムが非常に有効です。お薬も病状に応じて適宜調整する必要がありますので専門医による管理をおすすめします。
心臓の冠動脈※が動脈硬化などによって狭くなると、心筋(心臓壁を構成する筋肉)に送られる血液量が不足し、心筋が酸素不足となります。このときの痛みが狭心症の痛みです。
労作性狭心症は「階段を上ると胸が締めつけられるように痛くなる」、「重いものを持ち上げたり、坂道を歩いたりすると胸が苦しく痛む、安静にすると楽になる」という症状がみられます。痛みの特徴としては圧迫感や絞扼(こうやく)感などがあり、前胸部、みぞおち、肩、頸(くび)などに生じます。歯やのどが痛むケースもあります。痛みは多くは数分までです。
専門医による適切な診断の上で治療方法を検討する必要があります。治療には、①薬物療法、②心臓カテーテルインターベンション治療、③冠動脈バイパス術(外科手術)があります。
血管の狭い部分への治療が終了したら治療終了ではありません。原因である動脈硬化への治療を行い、全身血管の状態を改善させて再発予防をする必要があります。特に生活習慣病と呼ばれる高血圧・高脂血症・糖尿病への治療を積極的に行う必要があります。そのためには、①食事療法、②運動療法、③薬物療法を三位一体となって行い再発予防を行うことが重要です。その実践には心臓リハビリテーションによる包括的支援プログラムが非常に有効です。専門医に相談しましょう。
※心臓の筋肉に血液を送っている血管で、心臓に巻きつくように存在している
安静時狭心症は、夜、就眠中、明け方に胸が苦しく押さえつけられるような発作が起こります。多くの場合、冠動脈が一過性に痙攣(けいれん)を起こして収縮し、血流が一時的に途絶えるために生じると考えられています。冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症ともいいます。痛みの性質や部位などは労作性狭心症と同様です。夜間から明け方、喫煙、飲酒、寒冷刺激など特定の状況がけいれんを誘発することもあります。発作中には冠動脈の血流が無くなるため、命にかかわる病気です。このような症状がある場合、早めに検査を受けることが大切です。また、冠動脈の攣縮(けいれん性の収縮)も、動脈硬化の進行過程にみられる現象と考えられています。
治療は、①発作の原因となる生活習慣の改善、②薬物療法を行い、けいれん発作を起こさないようにします。
心筋梗塞とは、動脈硬化が進行し冠動脈にできていたプラーク(血液中のコレステロールや脂肪からできた粥状の物質)が冠動脈を塞いでしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死した状態をいいます。突然、胸が焼けるように重苦しくなり、締め付けられ押しつぶされるような症状が現れます。冷や汗が出たり、吐き気があったりすることもあります。この発作は長く続き数時間に及ぶこともあり、命の危険が非常に高い病気です。このような場合は、1分1秒を争う状態ですので至急救急車を呼んでください。内科的治療には冠動脈内に詰まった血栓を、専用のカテーテル(細い管)を血管内に挿入して吸引したり、バルーンが先端についたカテーテルで詰まった部分を拡げたり、再閉塞を防ぐためにステント(筒状の金網)を血管内に留置したりするインターベンション治療があります。外科的治療には冠動脈バイパス手術があります。
カテーテル治療やバイパス術が終わったら治療終了ではありません。急性期の治療が成功しても治療までに壊死した心筋は元には戻らないからです。残った心筋でこれからの人生に必要なポンプ機能を果たしていくことが求められます。心不全のリスクが非常に高い状態です。①残った心筋を保護していくこと、②再発予防が重要になります。
原因である動脈硬化への治療を行い、全身血管の状態を改善させる必要があります。特に生活習慣病と呼ばれる高血圧・高脂血症・糖尿病への治療を積極的に行う必要があります。そのためには、①食事療法、②運動療法、③薬物療法を三位一体となって行い再発予防を行うことが重要です。その実践には心臓リハビリテーションによる包括的支援プログラムが非常に有効です。専門医に相談しましょう。
心筋梗塞後の運動療法は専門医の指導のもとに行うことが重要です。
心臓は電気信号で心筋の動きを常に管理しています。命令は洞結節と呼ばれる最上位器官で出され、房室結節という中間地点を経由して、速やかに現場(左右の心筋)に伝達されます。この指揮系統がしっかり機能しているため心臓は正確に働いているのです。
不整脈は、この指揮系統が乱れることにより心臓の電気的興奮のリズムに異常をきたした状態の総称です。
不整脈は大きく分けて、脈が速くなる頻脈、脈が遅くなる徐脈、脈がとぶように感じる期外収縮の3つがあります。不整脈は治療の必要のないものから危険なものまで様々です。不整脈は健康成人でも一般的なもので、不整脈がありながらご自身で気付かず、健康診断などではじめて指摘される方もいます。一方、不整脈によっては心不全や失神発作を起こしたり、脳梗塞を併発したりするものもあります。不整脈を指摘されたときや脈の不整、激しい動悸を感じたときは専門医を受診しましょう。放置しておいてよい不整脈なのか、危険な不整脈に発展するものかなど、よく説明を聞いて適切な指導を受けることが大切です。
脳梗塞の原因になる不整脈として有名です。心房細動は、心臓の心房が小きざみに震え、血液がよどみ血栓(血液のかたまり)が形成しやすい状態になります。自覚症状としては、脈が乱れて心拍数が速くなるために、動悸や胸の不快感が現れます。また、心臓の機能が低下し、全身に効率よく血液を送れなくなるため、だるさ、息切れ、めまい、ふらつきといった症状が出ることもあります。心房細動自体は命に関わる病気ではありませんが、放置しておくと、形成された血栓が血流に乗って脳の血管を詰らせる心原性脳塞栓症を発症したり、全身に十分な血液を送ることができない心不全を引き起こしたりしますので、注意が必要です。
治療は、①血栓をできにくくするための薬物治療(抗凝固療法)、②心房細動による動悸症状を改善するための薬物治療、③心房細動そのものを止めるためのカテーテルアブレーション治療の3つがあり、これらを組み合わせて治療を行います。該当する方は専門医に相談して適切に対応しましょう。
脈が速くなる不整脈では、本来の命令とは異なる場所から通常より早いタイミングで次々とニセの命令が心筋に入るために脈が速くなり、動悸を自覚するようになります。あまりに早いと心臓は有効に機能できなくなってしまい失神することもあります。治療は、①薬物療法(ニセの命令を入りにくくします)、②カテーテルアブレーション(ニセの命令を出す場所を焼灼して治す)、電気的除細動(心臓のリズムをリセットします)があります。特に危険なタイプの不整脈では、植込み型除細動器の手術が必要になる場合もあります。
脈が遅くなる不整脈は、洞結節から出た命令がしっかりと現場の心筋に伝わらなくなってしまうことで脈が遅くなり、全身が必要とする血液を十分に送り出せないことで、めまいや失神、心不全になります。徐脈性不整脈が原因で症状が出ている場合には、必要に応じて心臓ペースメーカーの植込みを行います。
心臓は、全身から戻ってきた血液を肺に送る「右心」と肺で酸素交換がされた血液を全身に送る「左心」があります。左右の心臓は、静脈からの血流を受け止める「心房」と臓器に血液を送り出す「心室」に分かれます。心臓には全部で4つの部屋があり、血液が滞りなく循環するために、「弁」と呼ばれる4つの扉で区切られています。この扉は、「大動脈弁」「僧房弁」「肺動脈弁」「三尖弁」と呼ばれます。
弁膜症は、年齢と共に扉の立て付けが悪くなった結果、扉が開きにくくなったり、扉が閉じにくくなったりする病気です。血液が循環しにくくなり心臓に負担がかかるため、心不全(息切れやむくみなど)を引き起こしたり、失神の原因になったりします。健診での心臓の雑音から診断につながることも多い病気です。
軽症から中等症までは薬物療法で管理しますが、重症の場合には手術加療が必要になることもあります。従来は開胸して弁を交換する方法(弁置換術)しかありませんでしたが、近年では身体への負担の少ないカテーテル治療があるため、高齢者でも安心して治療できるようになりました。まずは専門医にご相談ください。
大動脈の血管壁は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。大動脈解離はこの血管壁に亀裂が生じて、内膜から中膜の一部までが解離した(剥がれた)状態をいいます。亀裂から血液が血管壁に流れ込み、大動脈解離が広がります。突然、発症し、通常、胸や背中の激痛を伴います。痛みが胸から背中などへ移動することもあります。発症時に、脳梗塞や心筋梗塞が起きたり、腹部の内臓や手足の血流が途絶えたりすることがあり、突然死の原因となる重篤な疾患です。迅速な診断と入院治療が必要になります。解離の状態によっては人工血管置換術などの緊急手術が必要になります。
加齢や動脈硬化の影響により動脈の一部が徐々に膨らみ瘤(こぶ)のように拡大してしまう状態をいいます。瘤の形や大きさによって破裂のリスクが高くなっていきますが、破裂するまで多くの場合で無症状です。ひとたび破裂すると高い確率で死に至ります。破裂リスクの高い患者さんは人工血管置換術やカテーテルを用いたステントグラフト挿入術を行います。
脚を栄養する動脈が動脈硬化によって狭くなったり閉塞したりすると、脚の血流量が低下します。その結果、「歩くと脚が痛くなり、しばらく休むと落ち着く」という症状が出ます。さらに重症になると、「安静にしていても脚が痛かったり、脚先が赤黒くなったり」し、最悪の場合には脚が壊死します。治療は、①カテーテル治療やバイパス術による血行再建、②禁煙などの生活習慣改善、③薬物療法、④運動療法を組み合わせて行います。場合によっては脚を切断せざるを得ないこともあります。閉塞性動脈硬化症の患者さんの半数に冠動脈疾患が潜んでいると言われています。
閉塞性動脈硬化症においても心臓リハビリテーションによる包括的支援プログラムは非常に有効です。専門医に相談しましょう。
静脈は血液を心臓に戻すための血管です。脚の静脈の流れが悪くなり澱む(よどむ)ことで、血管内に血栓ができる病気です。外部からの静脈の圧迫や血栓のできやすい体質が主な原因です。血栓が剥がれて心臓に飛んでしまうと、心臓から肺に向かう肺動脈に血栓が詰まってしまいます。急性肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)と呼ばれ、突然死する可能性のある病気です。治療は、血栓を溶かすための抗凝固療法と必要に応じてカテーテル治療を併用します。
心電図 | 心臓の電気活動を記録する検査 |
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心エコー | 超音波を使って心臓の動きや構造を検査する |
ホルター心電図 | 24時間連続で心電図を記録する検査 |
運動負荷試験 | 運動中の心電図や血圧を測定する検査 |
ABI(足関節上腕血圧比)検査 | 両手足の血圧を測定し脚の血流を観察する検査 |
冠動脈CT | 冠動脈の断面をCTで撮影する検査 |
心臓MRI | 心筋の性状や冠動脈の不安定プラークなどを検出する検査 |
心臓カテーテル検査 | カテーテルを血管に挿入して、心臓の内部を直接観察する検査 |
心臓核医学検査 | 微量の放射性医薬品を体内に注入し、心臓の機能や状態を観察する検査 |
心臓カテーテル治療(冠動脈) | 冠動脈の狭窄・閉塞している部分をバルーンやステントを用いて広げ、冠動脈の血流を改善させる治療 |
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心臓カテーテル治療(弁膜症) | 逆流や狭窄を起こしている弁にカテーテルを用いて人工弁を挿入し、弁の機能を改善させる治療 |
心臓カテーテルアブレーション | 不整脈の原因となる部位にカテーテルを用いて焼灼し、不整脈が出なくなるようにする治療 |
下肢動脈カテーテル治療 | 下肢動脈の狭窄・閉塞している部分をバルーンやステントを用いて広げ、下肢の血流を改善させる治療 |
心臓血管疾患の再発予防を目的とした、包括的な疾病管理プログラム